世界かんがい施設遺産「滝之湯堰・大河原堰」と国宝ビーナス
約6~7時間
諏訪地域の東部、八ヶ岳西麓は、標高1,000mを超える高原で気候も冷涼なうえに、中央自動車道を介して首都圏からのアクセスが良いことから、たくさんの別荘や保養施設が建ち並ぶエリアです。
そんなリゾート色の濃い当地において、観光の拠点となっているのが「白樺湖」と「蓼科湖」。ともに静かな林に囲まれ、多くの人を惹きつけています。また、その近くにあり、東山魁夷の名画「緑響く」のモチーフにもなったほどの美しい景観をもつ「御射鹿池」。これらの湖と池は今回のテーマである「農業用ため池」なのです。
この地域を語る上で欠かせない、象徴的な存在が、地域の偉人・坂本養川によって様々な技術や工夫を駆使して造られた「滝之湯堰・大河原堰」です。「世界かんがい施設遺産」に認定されたこの疏水によって、集落が形成され、地域の発展の礎となりました。
もう一つ、この地に来たら是非とも訪れたいのが「尖石縄文考古館」。長野県内にある4点の国宝美術品のうちの2点がここにあり、とりわけ2014年に新しく国宝指定された「仮面の女神」は幾何学的な紋様が特徴で、古代のものでありながら未来的な印象さえ受ける大変不思議な土偶です。
考古館の隣、滝之湯堰沿いには坂本養川の像があり、200年以上流れ続ける用水とともに、水路の開削の物語が大切に語り継がれています。
厳冬期には氷点下20℃にも達する寒冷地にありながら、古代より人々の生活が綿々と受け継がれてきており、この環境のなかで如何に暮らしていくかを工夫した先人の知恵と技術がうかがい知れる旅といえます。
SPOT
白樺湖
茅野市北山に広がる水田は、かつては度々冷害に見舞われ、植えつけた稲の3割が青立で実らないこともあったようです。そこで、昭和5年に、水を溜めて温めるため、蓼科高原にため池を築く工事が着手されました。戦争により昭和19年に一旦中止となりましたが、昭和21年、全区民の努力によりため池が完成しました。
今では、県下有数のレジャースポットとして、多くの観光客が集まっています。
武田信玄が北信濃制覇の軍議の際、御座岩に腰を据えたとされている御座岩遺跡が白樺湖に眠っているといわれています。
蓼科湖の円筒分水工
滝之湯堰の主な水源の河川の標高が高く水温が低いため、水を温めるため池として蓼科湖が築造されました。
ため池の築造箇所は、久保田堰の取水源だったことから、江戸時代からの取り決めにより、滝之湯堰と久保田堰の水量配分は9:1とする必要があったため、円筒形の水槽から溢れた水を円周の比率に応じて正確に水を分ける「円筒分水工」が造られ、これにより水争いが減りました。
乙女滝(大河原堰)
「乙女滝(おとめだき)」という人工の滝(落差工)があります。これは、滝之湯川から導水してきた用水を、渋川を横断させるために造られたもので、河岸の急峻な崖を一気に落下させ、集水した水を掛樋(かけひ)で渡し、渋川からの補給水と併せて下流へ水を導く仕組みの一部です。このように、比較的水量が多い河川の水を、いくつもの河川を渡しながら水不足の地域へ送る仕組みは、坂本養川が考案した「繰越堰(くりこしせぎ)」と呼ばれるもので、開削された江戸時代では画期的な技術でした。
迫力ある滝を間近で見ることができる観光名所であるとともに、世界かんがい施設遺産に登録された疏水の特長を学ぶことのできるスポットです。
御射鹿池
ため池百選に選定された御射鹿池は、日本画の巨匠・東山魁夷画伯の作品「緑響く」の題材となったことで有名なため池で、木々の緑を映すコバルトブルーの水面は訪れる人たちを魅了しています。水源の渋川の水は冷たく強酸性のため、ため池で水を温め湧水と合わせて希釈することによって、米の収穫量は大きく増加しました。湖底には酸性水を好むチャツボミゴケが繁茂していることで、湖面には木々がきれいに映り、幻想的な雰囲気を醸し出しています。
滝之湯堰
田沢村(現茅野市宮川)の名主であった坂本養川が、高島藩へ献策したことにより開削された最初の水路です。「芝湛(しばだたえ)」と呼ばれる取水方法は、地域の貴重な水を分け合うため、河川を堰き止める資材に木・枝葉・石を用いることで意図的に漏水させ、河川下流にも水を流す珍しい構造になっています。大河原堰と同じ「繰越堰」であり、堰筋は、洪水の影響を受けにくい硬い岩盤を探し、くり抜いて水を引き込むなどの工夫がされています。
尖石縄文考古館
八ヶ岳山麓に栄えた縄文時代の文化を紹介。 美的感覚に優れた国宝土偶「縄文のビーナス」、平成26年8月21日に新しく国宝に指定された土偶「仮面の女神」を中心に、土器や黒曜石で作られた石器など2000点余りの縄文時代の遺物が展示してあります。
また、世界かんがい施設遺産に登録されている「滝之湯堰・大河原堰」についても係員から聞くことができます。
※説明は、予約はできませんが、当日窓口で説明希望の旨を告げ、係員が対応できれば説明を受けられます。(無料)
【お薦め】
尖石縄文考古館のすぐ脇を流れる滝之湯堰に沿って遊歩道が整備されており、竜神池までの散策が楽しめます。竜神池は八ヶ岳の山々が見える絶景ポイントです。平坦な道を森林浴をしながらゆっくり歩いても片道15分ほどの距離で、さらに、そこから静かな池畔を一周することもできます。
DATA
観覧料 | 個人 大人500円、高校生300円、小中学生200円 団体(20人以上)大人400円、高校生200円、小中学生150円 |
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開館時間 | 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館 | 毎週月曜日(休日の場合を除く)・年末年始(12月29日~1月3日)・休日の翌日(この日が休日、土・日曜日の場合を除く) 臨時休館、開館する場合もあります |
URL | http://www.city.chino.lg.jp/www/togariishi/genre/1444868324346/index.html |
八ヶ岳総合博物館
茅野市の自然とそこに暮らす人々の生き方に焦点を当て、自然、歴史、産業、民俗などを総合的に展示しています。
世界かんがい施設遺産に登録されている「大河原堰・滝之湯堰」についてより知りたいのなら、堰開削の功労者・坂本養川のコーナーがあるこちらの施設がお薦めです。展示資料や「坂本養川ビデオシアター」で詳しく学ぶことができ、係員から説明を聞くこともできます。
※説明は、予約はできませんが、当日窓口で説明希望の旨を告げ、係員が対応できれば説明を受けられます。(無料)
DATA
観覧 | 個人 大人310円、高校生210円、小中学生150円 団体(20人以上)大人210円、高校生150円、小中学生100円 |
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開館時間 | 午前9:00~17:00(入館は16:30まで) |
休館 | 毎週月曜日(休日の場合を除く)・年末年始(12月29日~1月3日)・休日の翌日(この日が休日、土・日曜日の場合を除く) 臨時休館、開館する場合もあります |
URL | https://www.city.chino.lg.jp/www/contents/1000001544000/ |
たてしな自由農園
避暑地として名高い信州・蓼科高原と八ヶ岳山麓は、全国有数の高原野菜の産地でもあります。「たてしな自由農園」には、この地で生産者が手塩にかけて育てた瑞々しい農産物が集まり、旬の美味しい野菜や果物を豊富に取り揃えています。
【茅野店】(諏訪IC利用)
関東甲信越地域最大級の売場面積を誇り、蓼科高原の美味しい野菜、信州特産のくだもの、魅力的な農産加工品を多数取り扱っており、信州のアンテナショップ的な役割を果たしています。春の山菜・秋の山きのこシーズンには八ヶ岳山麓から届いた旬の素材が売場を埋め尽くし、お店の風物詩になっています。
併設された「808Café」では、新鮮でおいしい高原野菜をおなかいっぱい味わえる”自然の恵みたっぷりサラダ”や、厳選した小麦粉と蓼科・八ヶ岳の素材をつかったパンなどをお召し上がりいただけます。
【原村店】(諏訪南IC利用)
山梨、関東方面から広大な田園風景を貫いて蓼科高原につながる”八ヶ岳エコーライン”沿いに立地しています。
原村店がある諏訪郡原村は、日本一のセロリ生産地として有名で、ブロッコリー・レタス等の高原野菜も全国トップレベルの産地です。
原村のほぼ中央にある当店は、今まで食べたことがないような”瑞々しくて美味しい”高原野菜があつまる直売所です。
併設されたカフェレストラン&ベーカリー「808Kitchen&Table」では、直売所で取り扱っている旬の美味しい野菜や果物を使ったメニューやパンなどをお召し上がりいただけます。
DATA
営業時間 | 9:00~17:30(冬期9:30~17:30) |
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休業日 | 5~11月は無休、12~4月は水曜定休 |
URL | http://www.tateshinafree.co.jp/ |